小説『ソードアート・オンライン1』のあらすじと感想

川原礫の小説『ソードアート・オンライン1 ― アインクラッド』を読み終えました。

先にアニメ版を全て観ているのですが、ここ最近で一番影響を受けている作品だと思います。

ソードアート・オンライン〈1〉アインクラッド (電撃文庫)
川原 礫
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あらすじ: もう一つの現実としての仮想世界

アインクラッド・第一層・情景

2022年、とうとう完全な仮想現実空間が開発され、VRMMORPG《仮想大規模オンラインRPG》として正式にサービスが開始されます。

正式スタート初日、約1万人のユーザがゲームに参加しましたが、開発者・茅場晶彦の陰謀で全員がログアウトできなくなり、仮想世界に囚われてしまうところから物語は始まります。

その仮想世界、ソードアート・オンライン(以下SAO)では、ゲーム上での死、つまりHPが0になると実際の肉体も即死するようにプログラムされており、ゲームをクリアすることでしか現実世界に戻る手段はありません。

そんなデス・ゲームと化した仮想世界の中で、必死に生き抜いて現実世界に戻ろうとする、主人公・キリトの奮闘や葛藤を描いた作品です。

Amazonでの評価は賛否両論

Amazonのレビューでは結構評価が分かれているようですが、自分は純粋に素晴らしい作品だと思いました。

作中では、SAOの世界観や設計が緻密に描かれており、実際にSAOというゲームが存在するかのようなリアリティで描写されています。その高度な創造性と風景描写だけを取っても、この作品を読む価値は充分にあると思います。

評価が分かれている理由は、一見すると単なるSF冒険ファンタジー・恋愛小説に終始していることだと思います。特に主人公キリトと女剣士アスナの恋愛にページの大半が割かれていることと、キリトが初めから最強であることの2点に賛否両論があるようです。

仮想世界から垣間見える普遍性

アスナ・ニシダとの別れのシーン

この作品の真に素晴らしいところは、バーチャル・リアリティが行き着くかもしれない世界を想像させ、そして現実世界との対比として浮かび上がる、普遍的に大切なことに気づかせてくれることじゃないかと思います。

そのことがp.276〜279に端的に書かれています。以下にアスナの言葉を引用します。

「キリト君はわたしにとって、ここで過ごした二年間の意味であり、生きた証であり、明日への希望そのものです。わたしはこの人と出会う為に、あの日ナーヴギアを被ってここに来たんです。…ニシダさん、生意気なことかもしれませんけど、ニシダさんがこの世界で手に入れたものだってきっとあるはずです。確かにここは仮想の世界で、目に見えるものはみんなデータの偽物かもしれない。でも、わたしたちは、わたしたちの心だけは本物です。なら、わたしたちが経験し、得たものだってみんな本物なんです」

本当に大切なものは目には見えないといいますが、まさにそのことをよく表した一文だと思います。

リアリティと想像力

茅場晶彦とキリト・アスナ

自分にとって、今のところ一番仮想世界に近いものは小説です。極端にいえば、ゲームや映像作品を通じていかにリアルな映像を見せられても、それがリアルであればあるほど、どうしても非現実的で陳腐なものに見えてしまいます。

それは何故だろうと時々考えるのですが、多分自分たちが真に現実だと感じているものは、目に見えている物質や空間ではなくて、その行間にある何かなのだと思います。

その点で、小説というものは直接想像力を刺激し、違う人生を追体験させ、どんな映像よりも感情を強く揺さぶってくれます。

この作品は舞台こそ仮想空間ですが、仮想世界をリアルに描くことによって、現実を描いた作品以上に普遍的なことを浮かび上がらせています。少し美化し過ぎかもしれませんが、それがこの作品の他にはない魅力だと思います。

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